問は表題のとおりで、CxOは、実行すべきなのか?すべきだとしたらどんなことをすべきなのか?ということだ。
結論から言えば、 「実行と戦略を分けることが不可分な領域が存在するので、戦略を決める重要なポイントは実行すべきである。」
だと考えている。
例えば、CTOがコードを書かなくなった企業では、攻めた技術戦略を描きにくくなるのではないかという仮説を持っている。
Googleのような(もはや営利目的を超えて)新しい技術を生み出すことが使命となっている企業はいざ知らず、我々のようなスタートアップでは、戦略に織り込まなければ新しい技術スタックを採用することも難しい。
昨今のように採用も難しく、常にリソース不足なスタートアップで、社内の誰も経験したことのない技術を使うと決めるのは、かなり勇気のいることだ。
「なぜその技術が必要なのか?」は、事業戦略や採用・広報戦略と紐づく技術戦略から導かれなければならない。
そして、技術戦略を決めるには、実はかなりの手触り感を持って技術のことを理解している必要があるのではないか。
AIの何たるかを理解していない人が、事業戦略上重要そうだから、技術戦略に「〇〇のAI化」(〇〇にはそのプロダクトの重要な業務フローなどが入る)を掲げたとしても、おそらく実行されない戦略となりかねない。
きっと考えているの大枠は間違っていないのだろうが、
- どのようにAI化すれば〇〇という業務フローは大きく変わるのか?
- どの部分のAI化に自社のコアコンピテンシーを置いて、内製化するのか?
- 例えば、〇〇に「請求書データの電子化」が入る場合、 コアコンピテンシーには、「請求書データに特化することで精度を高めたOCR技術」があたる等
- そもそも〇〇という業務フローをAI化することがなぜ事業戦略上そんなにも重要なのか?なぜそこに投資することで自社の事業的優位性が圧倒的なものとなり得るのか?
- 上記同様〇〇に「請求書データの電子化」が入る場合、 請求書を扱うSaaSで最も面倒くさく間違いが起こりやすいのが、請求書データを電子化する部分であり、そこが滑らかであればあるほど、UXへの満足度が爆発的に跳ね上がり、 サービスをより多く使ってもらえることで、データが集まり、より読み取り精度が上がるという自己強化ループが回り、他社の追従を許さなくなるから
- どのように(採用や育成も含めて)その技術を社内に蓄積していくのか?
など、技術戦略と呼ぶからには考えなければならないことがたくさんあるはずだ。
このためには、かなりの手触り感で技術そのもののことや、技術のトレンドについて理解している必要がある。
なぜ戦略は研ぎ澄まされていなければならないか?
それは、研ぎ澄まされていればいるほど、後の動きに無駄がなくなるからだ。
スタートアップは一点突破だ。
であればこそ、捨てて絞ることこそ戦略だ。
「(あんまりよく分かっていないけど、)とりあえず流行っている言語やら技術を色々採用しておいて、広報していけばエンジニアが集まるはずだ!!」
というのは戦略とは言わない。
捨てて絞るためには、「なぜその技術に優先的に投資をする必要があるのか?なぜ他の技術ではないのか?」を明確にする必要がある。
そのためには、「ただ流行っているから」、「なんとなく上手くいきどうだから」というのではダメで、 事業や会社の向かう方向性になぜその技術が必要不可欠なのかを明瞭に説明できる必要がある。
そのためには、自分で手を動かし、本当にその技術領域に会社の命運を委ねるべきなのかを深く考えることができなければならないはずだ。
だからこそ、CTOは、自分たちの技術戦略に深く関わる技術領域には、常にアンテナを張り、自分たちの事業にどう活かすべきなのかを考えておく必要がある。
CTOは、無闇やたらにどんな技術でも触っている必要はないと思うし、必ずしもすべての領域で一流である必要はないと思う。
大事なのは、どこに自分の時間を投資し、自社が圧倒的な優位性を築くための戦略を立てられるかどうかだ。
ここでは、ほとんどCTOを仮定して考察してきたが、それは他のCxOでも同じだろう。